こんにちは、嵯峨です。
普段ベースを弾いていてナットに興味を持つことって少ないと思います。
しかし、リペアマン的にはナットはとっても大事なパーツとして認識されています。
たまごを頼めば寿司屋の腕がわかるなんて言いますが、ナットを見ればリペアマンの腕がわかります。
弦の太さは細いものだと約0.23mm、ベースのG弦でも1.14mmくらい。
その太さに合わせて溝を切るんですから、0コンマなんミリの世界。
そんな細かい部分だからこそ精密な作業が要求されるわけですね。
僕らリペアマンがこんなに力を入れてやっているってことは、やっぱりこれってとても大事なパーツだからなのです。
ナットの調整では弦間ピッチ、弦溝の堀り方などを工夫して劇的にプレイヤビリティを向上させることができます。
(逆に言うとナットがだめな楽器は本来の能力が発揮されないってことですね)
ナットには大きく以下の3つの要素があります。
・ナット幅
・弦間ピッチ
・弦溝
ナット幅はローフレットプレイヤビリティに大きく影響します。
ネックの幅自体の話でもありますが、ジャズベースの場合はナット幅は38mm、プレシジョンベースの場合は42mm程度に設定されることが多いです。
ピンときませんか?
もちろんネックの握り心地は変わりますが、ナット幅のみの調整でも案外変わるものです。
最近の多弦ベース業界ではナット幅を狭めに設定してコンパクトにまとめるのが流行りですね。
次に弦間ピッチ
弦間ピッチの取り方には一般的に以下の2つの方法があります。
1、弦の真ん中を等間隔にする
2、弦と弦の間隔を等間隔にする
この違いってわかりますか?
(雑な絵ですみません)
1の場合は、弦が太くなるほど弦間ピッチが狭くなります。
2の場合は、弦が細くなるほど弦間ピッチが広くなります。
と、一長一短なので、特に多弦ベースのナットを調整する際はこの中間を取っていきます。
センスが問われる部分ですね。
次は弦溝
弦溝は太さ、高さ、傾き、とこれもまた様々な要素があります。
弦溝の太さは当然弦に合わせたものになります。
ここの調整がうまくされていないと、弦のビビリが起こったり、チューニングが不安定になってしまったりします。
弦溝の高さは開放弦の力強さ、ピッチの安定性につながります。
また、この高さが高いとビビリやすくなってしまいます。
そして傾き。
ちゃんと作られているナットは溝が斜めに切られています。
通常弦溝はペグのシャフトに向かって滑らかに弦が繋がるように切ります。
この斜め具合をどうするかでテンション感を調整することも可能で、ナットの持ち具合もかわってきます。
変わり種を紹介すると。ナットの加工法の1つで、スキャロップドナットというものがあります。
ナットの質量を減らす事で、分離感の良さに繋がるなんていわれてます。
なのでアコースティックギターにはよく施されている加工ですね。
こんな小さなパーツですが、これだけ細かい要素が沢山つまっています。
魂は細部に宿るっていうから、ナットが汚いリペアマンは魂も汚いって事でしょうか。
そう思われるからリペアマンのみなさん気をつけましょうね。
そういう事なので、ナットをてきとうに作るリペアマンは信頼できません。
同じように、ナットが汚い工場の楽器も信頼できません。
そう、ナットでリペアマンの技量がわかるように、ナットの美しさをみたらその楽器のレベルもわかってしまうのです!
じゃあどうやって見分けるのかと。
こんなとこみてはいかがでしょう?
・弦がナットに埋まってない
いいな、と思うナットは弦が弦溝から半分くらい出てます
逆にだめだなって思うナットはなんか埋まってます
弦溝は調整するけど弦溝の周りは調整しないっていう、リペアマンの横着ですね。
見つけたら蹴り飛ばしてやってください。
・ナットの光り具合
ナットって別に磨かなくていいと思うんです。
まぁ別にピカピカでも傷があっても音は変わらないし。
でも魂を込めて作ったナット、綺麗にして納品したいと思うのがリペアマンの心境です。
磨きこそ、です。
この2点だけでも見てみると良い楽器とそうでない楽器は全然違います。
ぜひギターショップでナットを見てください。
思わぬ発見があるかも。
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