はじめに
Fender Jazz Bassは、1960年代と1970年代で仕様や設計に明確な違いがあり、プレイヤーやコレクターの間でも大きな注目ポイントとなっています。
本記事では、いわゆる“60’s” “70’s”という分類でそれぞれの年代で何が異なるのかを、木材・塗装・装飾・ピックアップ位置など多角的に解説していきます。
年代による違い
木材の違い

まず、最も顕著な違いの一つは「木材」です。60年代モデルの一般的な仕様は、アルダーボディにローズウッド指板という組み合わせです。これに対して70年代には、アッシュボディとメイプル指板の構成が増えていきます。特に1970年頃を境に、アッシュ+メイプルという“THE 70’s”仕様が定着し始めます。木材の違いはサウンドに直結するだけでなく、見た目や仕上げにも大きな影響を与えます。
塗装の違い
その仕上げとして注目すべきが「塗装」です。ローズウッド指板はもともと濃い色をしているため汚れが目立ちにくいのですが、メイプル指板は白く、未塗装のままだと黒ずみやすくなります。このため、70年代以降のメイプル指板には基本的に塗装が施されており、これもまた音色やタッチに影響を与える要因となっています。
装飾の違い

装飾面では、1966年頃からネックにバインディングが施されるようになり、ドットインレイからブロックインレイへと変化していきます。
白いバインディングやインレイが主流ですが、一部にはブラックバージョンも存在しており、1974年頃まで採用されていました。
ただし、仕様変更は一律ではなく、ローズウッド指板でバインディング+ブロックという仕様や、ドットインレイでバインディングありといった“ミックスモデル”も存在します。これらの存在はベースオタクの方達にとっては非常に魅力的なものになっています。
ピックアップの位置の違い

ピックアップの位置も、60年代と70年代では大きな違いがあります。1970年代に入ると、ブリッジピックアップの位置が約1cmほどブリッジ寄りに移動します。
このわずかな位置の変化が音に大きな影響を与えており、特にブリッジピックアップ単体ではタイトで細身な音になりやすく、ミックス時でも中域の出方や立ち上がりに違いが出ます。どちらのポジションも支持するプレイヤーは多く、現代のブランド(例:LAKLANDなど)でも両ポジションの選択肢を用意するなど、影響は今なお続いています。
ネックジョイントの違い

60年代と70年代のJazz Bassを比較する上で、ネックジョイントの仕様も見逃せないポイントです。60年代のモデルでは、ジョイント部の設計が比較的シンプルで、4点留めの機構を採用しています。角度の調整機構などは備わっていませんでした。それに対して74年頃から3点留めになっており「マイクロティルトアジャストメント」と呼ばれるネックの角度調整機能が搭載されています。

この仕様変更により、弦高や弾き心地をより細かく調整できるようになったことが、プレイヤーにとっての利便性向上につながりました。ネックプレート自体の刻印や構造も年代によって異なる場合があり、見た目にも識別しやすい要素の一つとなっています。
しかし、この機構のせいでハイ起きが酷くなっている70年代のジャズベースも存在しているとの噂もあります。1974年から3点留めが導入されているため70年代前半の個体に関しては70年代の見た目をしているが4点留めのものも存在しており、過渡期のミックスされた個体はオタ心擽られるものがありますね。
ロゴの違い

60年代と70年代のJazz Bassでは、ヘッドに入っているロゴのデザインにも違いがあります。60年代のモデルに多く見られるのは、いわゆる「トランジションロゴ」と呼ばれるタイプです。これは、Fenderの初期ロゴとも完全には一致せず、過渡期に使用されたスタイルで、やや丸みを帯びた書体が特徴です。
一方、70年代に入ると「モダンロゴ」と呼ばれる太字で直線的な高級感のあるデザインに変化していきます。細かいところになりますが、JAZZ BASSの文字の入り方にも違いがあります。
トラスロッドの違い

70年代のものはトラスロッドの調整口がヘッドの方に出ています。60年代に関してはネックエンドにあります。これらの変化によりネックをボディから外さなくてもトラスロッドにアクセスできるようになりました。
小話ですが70年代のトラスロッド調整口のパーツは見た目が銃弾に似ていることからブレッドナットと呼ばれることもあります。
ネックの調整がしやすい機構なのですが弊害もあり、指板のギリギリまで機構が存在するためナット付近が割れてしまっている個体が見られます。
そのため70年代のジャズベースを購入する際には
等をぜひチェックしていただければと思います。
最後に
このように、Fender Jazz Bassは60年代と70年代で“外見・材質・構造・音”のあらゆる面において進化・変化を遂げています。ただ見た目が違うだけでなく、設計思想やプレイヤビリティにも明確な違いが存在するため、選ぶ際はスペックだけでなく「いつの時代のJazz Bassなのか?」という視点を持つことがよりベースを楽しむための一歩だと思います。
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