数あるエフェクターメーカーの中でも、硬派・質実剛健というイメージが強いMXR。
エレキギター用のディストーションペダル「distortion +」などが有名ですが、ベース専用モデルのエフェクターシリーズ「MXR Bass Innovation」がラインナップされているのをご存じでしょうか。
どのモデルも、他社とはひと味違うハイクラスなサウンドと、ユニークなディテールを備えています。
ここでは、MXRのベース専用エフェクター「MXR Bass Innovation」のエフェクター12種類をご紹介します。
「個性のある音作りがしたいけれど、ボトムを支えるベーシストとしての立ち位置は見失いたくない……。」という方に試して欲しいシリーズです。
まずはMXRというメーカーそのものについて見ていきましょう。
MXRの歴史
1972年にニューヨークで2人のエンジニアによって共同創業されたMXRは、現在もその名を残す「Phase 90」や「distortion +」「Dyna Comp」といった、ギター用ペダル型エフェクターの名器の数々を世に送り出したことで有名です。
MXRはそれまでになかった非常にコンパクトなボディを用いて、様々な種類の高品質なエフェクターを開発し、プレイヤーの演奏環境を大きく変えました。
70年代はファンクやクロスオーバーなど、新しいジャンルの音楽が次々に生み出されていた時代だったこともあり、MXRの革新的なエフェクターが音楽の発展に大いに貢献しました。
その後も「Phase 90」を使用したエドワード・ヴァン・ヘイレンの画期的なサウンドや、Marshallと「distortion +」を組み合わせたランディ・ローズのギターサウンドなど、ロックの発展の歴史とともにMXRのエフェクターがしばしば登場します。
こうしたことによってMXRは、ペダル型エフェクターの主要メーカーに名を連ねることとなります。
1987年にはJim Dunlop社がMXRのライセンス権を取得しました。
前述のようなクラシックモデルを再販するとともに、アーディストシグネチャーモデルや新しいエフェクターを開発し、今に至るまで世界中のプレイヤーに愛され続けています。
ベース向けエフェクターのライン「MXR Bass Innovation」が追加されたのもライセンス権が移ってからのことです。
それでは次に、MXRのエフェクターの特徴について見ていきたいと思います。
MXRのエフェクターの特徴
MXRのペダル型エフェクターの特徴の一つは、MXRサイズとも表現されるそのコンパクトなボディです。
小さいながらも重厚感があり、堅牢なボディは耐久性の高さもうかがわせます。
また、ギター用は1コントロールなどシンプルなものも目立ちますが、ベース用エフェクターに限って言えば、コントロールノブは多すぎず少なすぎず、自由度と操作性のバランスの取れたモデルが多く、使い勝手がよいと言えます。
ノブ以外にも何らかの切替用ミニスイッチがついていることで、サウンドのキャラクターやエフェクト効果を大きく変化させることのできるモデルが多く存在しています。
希望のサウンドに近づく可能性も高く、自由度が高い分、より幅広い音作りができます。
それではいよいよ、MXRのベース専用ラインナップ「MXR Bass Innovation」をご紹介します。
MXRのエフェクター一覧
M80 / Bass D.I.+
「M80 / Bass D.I.+」は、ベーシストの定番プリアンプの一つとして知られる、MXRのベース用プリアンプ/ディストーションです。
クリーン・ディストーションの2モードの音作りができるほか、XLR出力でミキサーに直接信号を送るDIボックスとしての機能も充実しています。
プリアンプとしては比較的安価で、宅録などにも便利なので、プロ・アマチュア問わず人気が高いモデルです。
3バンドのイコライザーは効きがよく、積極的な音作りを可能にしています。
さらにcolorミニスイッチをONにすると、スラップやハードなテイストによく合う、モダンなドンシャリサウンドに変化します。
ディストーションモードは粗めのザラッとした質感の歪みで、かなり激しいところまでドライブするので、ロック系のプレイヤーに重宝します。
BLENDツマミで原音とミックスすることで、強く歪ませたときにも音の芯を際立たせることができます。
GATEボタンおよびTRIGGERツマミでノイズ除去レベルを設定すると、無音時の自然なノイズゲート効果を得られるという、歪みペダルに嬉しい機能もついています。
クリーンモードと独立しているため、1台で音の幅が広がり、ソロ時との音量調整などが可能な点もユーザーに高評価です。
M81 / Bass Preamp
「M81 / Bass Preamp」は、MXRのベース用プリアンプです。
「Bass D.I.+」との大きな違いは、ディストーションチャンネルがないことと、MIDのフリケンシーツマミが付いていることです。
歪みがない代わりに、ベースサウンドのキャラクターを大きく変えるMIDレンジを柔軟に操作できるため、クリーンの音作りの自由度が格段に上がっています。
アンサンブルの中でも埋もれない、クリアで芯のあるサウンドです。
DIボックスの機能として、DIRECT OUTの信号がイコライザー回路の前もしくは後を切り替えるPRE/POSTスイッチと、DIRECT OUT接続時にノイズの原因となるグランドループを回避するGROUND/LIFTスイッチがついています。
OFF時の信号はデフォルトでバッファーを通っていますが、内部基盤のスイッチを操作すると、MXR独自のバイパス機構であるHARDWIRE BYPASSに切り替えたり、DIアウトプットが使えなくなる代わりにトゥルーバイパスに切り替えることが出来たりする、玄人向けのこだわり機能も搭載されています。
M82 / Bass Envelope Filter
「M82 / Bass Envelope Filter」は、MXRのベース用オートワウペダルです。
ベースに大切な低音を保ちつつ、オートワウのフィルター効果を得ることが出来ます。
完全アナログ製、こだわりのトゥルーパイパス仕様です。
DECAY(フィルター変化の終わる時間)・Q(フィルターの効く周波数帯域)・SENS(フィルター変化を始める入力レベル)の3つのパラメータでフィルター効果を調整し、DRY(原音)とFX(エフェクト音)をミックスするという流れで、好みのかかり方を直感的に設定できます。
原音に薄くフィルター効果をかけ続けるといった、ユニークなアレンジにも使えます。
「かかり方が強烈」というよりは「いい感じに使える音」と評価されています。
音痩せが少ない上、アンサンブルの中でもきちんと主張してくれるサウンドです。
ファンキーなスラップや、怪しい浮遊感のシンセベース的用法など、シンプルだからこそ幅広く使えるオートワウです。
M83 / Bass Chorus Deluxe
「M83 / Bass Chorus Deluxe」は、MXRのベース用コーラス/フランジャーペダルです。
しっかりした効きのアナログコーラスに、フランジャーとして使用できるモード切替ミニスイッチを搭載しています。
コーラスサウンドをBASS/TREBLEツマミでコントロールすることができるほか、独自のX-Overミニスイッチが搭載されています。
ベースにコーラス/フランジャーを使用した際に起こりがちな、低音域の位相ズレなどによる音消えを防ぐスイッチです。
ON時には100Hz以上のみをエフェクト効果の対象にすることで、音の揺れ効果のみを残し、低音域の輪郭を保持できます。
コーラスとしては綺麗なかかり方で、ベースの芯のサウンドを大切にしたエフェクターです。強烈な揺れ効果を期待するというよりは、バンドのアンサンブルの中で活かせるというところが強みでしょう。
M84 / Bass Fuzz Deluxe
「M84 / Bass Fuzz Deluxe」は、MXRのベース用ファズペダルです。
原音(DRY)とエフェクト音(WET)をブレンドすることで、ベースサウンドの芯を損なうことなく、強烈なファズのドライブ効果を得ることが出来ます。
近年の製品らしく、バイパス方式はトゥルーバイパス仕様です。
WET側にだけ有効なTONEツマミは、ファズサンドのキャラクターを劇的に変化させます。
FUZZツマミによるドライブ加減との兼ね合いで、低音を前に押し出した荒々しいファズ音から、倍音を強調したオーバードライブのようなサウンドまで幅広く表現することができます。
ドライブはかなり激しめにかかる一方、ノイズは比較的少なく、音も現代的な印象です。
暴れ馬というよりは、扱いやすい優等生的なファズであるところが、MXRらしいといえる点かもしれません。
M85 / Bass Distortion
「M85 / Bass Distortion」は、MXRのベース用ディストーションです。
DRY(原音)とWET(エフェクト音)をブレンドする方式で、アンサンブルの中でもピッチ感を保ったまま、存在感のある激しい歪みを加えることが出来ます。
「Bass D.I.+」に備えられたディストーションとはまた違ったテイストで、歪みに関する幅広さは比較にならないほど多彩です。
モダンなハイゲインサウンドのシリコンモード、およびクラシックで厚みのあるサウンドのLEDモードにミニスイッチでチェンジできるほか、TONEツマミの設定によって、暖かさやギラつきを強調した歪みへとサウンドを変えられます。
DIST・DRY・WETツマミの微妙な調整によって、ピッキングニュアンスも豊かに表現できる、音圧のあるディストーションサウンドが生まれます。
作り込める音の幅が非常に広く、歪みにこだわるロック系ベーシスト必聴の1台です。
M87 / Bass Compressor
「M87 / Bass Compressor」は、MXRのベース用コンプレッサーです。
小さなボディにInput・Output・Attack・Releaseツマミ、4種類のRatio選択ノブを搭載し、上部にはパラメータのガイドとなるLEDランプのゲインリダクションゲージが備わっています。
効果の視認性・実用性と使いやすさの両立がこのモデルの魅力です。
Inpurツマミの設定で、アクティブ・パッシブ問わずに機材のピックアップの出力に合わせて使うことができます。
パッシブの場合は大体3時の方向が目安です。
これぞMXRともいえるクリアでクリーンなトーンが特徴で、繊細さを残した自然なコンプレッションから、大胆なサウンドメイキングへの活用まで幅広く使えます。
こちらのモデルもトゥルーバイパス仕様です。
M89 / Bass Overdrive
「M89 / Bass Overdrive」は、MXRのベース用オーバードライブです。
ディストーションモデルと同じく、CLEAN(原音)とVOLUME(エフェクト音)をブレンドする方式です。
アンサンブルに埋もれず、サウンドの芯を十分に際立たせることが出来ます。
倍音の豊かな、きめ細かい歪みのリッチなオーバードライブという印象です。
ディストーションほどの歪み効果が必要なく、原音をより活かした音作りがしたい人には、こちらの方がピッタリかもしれません。
骨太で幅広いジャンルに合う使いやすいサウンドですので、1曲通して、さらには常時ONでも積極的に使っていける、非常に頼りになるオーバードライブです。
M280 / Vintage Bass Octave
「M280 / Vintage Bass Octave」は、アナログ回路を追求したMXRのベース用オクターバーです。
DRY(原音)・OCT1(1オクターブ下)・OCT2(2オクターブ下)をブレンドするツマミと、DRYのミッドレンジをブーストして音の輪郭を際立たせるMIDミニスイッチで構成されています。
ベース用のオクターバーはシンセのような厚みを持たせたり、低音をうならせて吼えるような轟音サウンドなどが魅力です。
反面、低音がぼやけがちなエフェクターですが、このオクターバーはMXRらしいハッキリとしたサウンドが特徴です。
設定によって、意外と多彩な表情を見せるオクターバーです。ただの飛び道具に終わらない、使える音の出せるエフェクターとして強い味方になるでしょう。
M282 / Dyna Comp Bass
「M282 / Dyna Comp Bass」は、MXRのベース用コンプレッサーです。
その名の通り、ギター用コンプレッサーペダルの名器「Dyna Comp」をベース用にチューンしたモデルとなっています。
OUTPUTとSENSITIVITYで音量とサステインを決定し、TONEで中高域の響きを調整して低音の強弱を維持します。
CLEANツマミで原音を混ぜることが出来るため、音の輪郭を明確に保つことが可能です。
ATTACKミニスイッチは、2種類の異なる早さのアタック感を選択することができます。
幅広い音作りのできるコンプレッサーと言えるとともに、あえて音を潰してコンプレッションを得たり、アタック感を強調するなど、先に紹介した「M87 / Bass Compressor」と比べて積極的な音作りに向いているのが特徴です。
M287 / Sub Octave Bass Fuzz
「M287 / Sub Octave Bass Fuzz」は、MXRのベース用ファズ/オクターバーです。
大小のツマミとミニスイッチがひしめく、一見とっつきにくいエフェクターですが、端的に言えばかなり細かく音作りの出来るファズペダルといったところでしょうか。
TREBLEとBASSで音質をコントロールできるFUZZセクションは、ミニスイッチでWormとBrightのキャラクター切替ができます。
別モデル「Octave Deluxe」のGrowlツマミを再現し、1オクターブ下の音を重ねられるサブオクターブセクションは、エフェクトON時は別個にON/OFF使い分けが可能。
そしてDRYセクションはMID+ LEVELで中音域を調整でき、音に張りを与えます。
これらの3つのセクションをミックスすることによって、なかなか両立することの難しい、太く抜けの良い、しかも荒々しく重厚なファズサウンドを得ることが出来るという優れものです。
多機能なのでこだわり派にはたまらないファズペダルでしょう。
M288 / Bass Octave Deluxe
「M288 / Bass Octave Deluxe」は、MXRのベース用オクターバーです。
先に紹介した「M280 / Vintage Bass Octave」との違いは、1および2オクターブ下の音を原音とミックスするのではなく、1オクターブ下の音を、中高域と低域の二つのセクションに分けて原音とミックスするという点です。
オクターバーとして反応が非常によく、低ノイズです。
またエフェクト音の細かいミックスが出来ることで、オクターバーの美味しい部分だけを加えられるという使いやすさが魅力だといえるでしょう。
MID+ミニスイッチで音のパンチを変えられるのも、好みに合わせた音作りをする助けとなってくれます。
総合的な使い勝手の良さで、ギター用オクターバーとしても人気です。
まとめ
MXRのカタログにラインナップされている、ベース用ペダルエフェクターシリーズ「MXR Bass Innovation」12種類をご紹介しました。
音楽性が多様化し、ベーシストもエフェクターで個性を出したり、楽曲のアレンジに貢献することが非常に多いといえます。
それに合わせて音痩せやアンサンブルのボトムの維持に悩む機会も、以前より多くなっているのではないでしょうか。
MXRのベース用エフェクターシリーズはそういった実用的なところがよく考えられており、ベースサウンドの可能性を飛躍させながら、バンドにおけるベースとしてのポジションもズラさないというデザインが一貫しています。
MXRの硬派なイメージを形作っているのは、そうした姿勢なのかもしれません。
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