唯一と言って良いほど、ギタリストよりもベーシストに愛用者が多いエフェクターがプリアンプではないでしょうか。
それほどにベーシストにとっては重要なエフェクターだと言えますが、初心者の方にとっては「プリアンプ」と聞いてもイマイチよく分からない、一体どんな効果があるのかわからない、というものでもあると思います。
今回の記事ではプリアンプの概要や使い方、つなぐ順番、おすすめの機種を紹介いたします。
ベーシストには必須? エフェクターのプリアンプとは一体何?
「アンプ=エレキギターやベースを接続して音量を増幅するもの」というのは皆さんご存知だと思います。
ではその「アンプ」と「プリアンプ」は一体何が違うのでしょうか?
プリアンプはアンプの一部!
「pre=前の」という意味なので、「プリアンプ=アンプの前段」のようなイメージです。
「プリアンプ」は楽器から送られてきた微弱な音声信号を調整し、後段の「パワーアンプ」がスピーカーから出力するために信号を増幅します。
これらの2つの機能が備わっているのが一般的な「ヘッドアンプ」です。
つまり、ヘッドアンプに搭載される「ゲイン」ツマミやトレブル、ベースなどの「イコライザー」部分 =「音質を調整する」ことがプリアンプの主な仕事なのです。
プリ部分だけを抜き出したもの=プリアンプエフェクター!
プリアンプがアンプの一部だということは分かりましたが、では何故ペダル型のエフェクターとしてプリアンプが重宝されるのでしょうか?
先に述べたようにプリアンプの仕事は「音質を整え、調整する」こと。
つまりプリアンプを持ち歩けるということは、ライブハウスやスタジオの機材、環境を問わず自分の好きなサウンドを確保できるということです。
さらにプリアンプの音質調整機能により、現場の機材では物足りない音作りの追い込みをかけることもできます。
ちなみにこのエフェクター型のプリアンプを「アウトボードプリアンプ」と呼び、アクティブベースに内蔵されているものは「オンボードプリアンプ」と呼びます。
プリアンプの大事な仕事その1 ~インピーダンス変換~
プリアンプを通すことで得られる効果として、音声信号が「ローインピーダンス」に変換される、ということもあります。
パッシブのエレキベースやギターから出る信号は「ハイインピーダンス」といい、ノイズに弱く、長くシールドを弾きまわすと音痩せが目立つのが弱点です。
ローインピーダンスの場合はこれらの2点に対して強く、パッシブベースであってもプリアンプを使用してインピーダンスを変換することで音質が安定します。
この点もベーシストにプリアンプ使用者が多い理由の1つです。
プリアンプの大事な仕事その2 ~DI機能で信号をバランス信号に変換~
演奏する会場の大きさや環境によって、お客さんに聞こえる音はアンプの出音ではなく、アンプより手前の信号をPAに送ることが多いです。
その際、通常のエレキベースが出力する「アンバランス信号」の場合、長くケーブルを弾きまわすことによる音痩せやノイズの混入などの問題にさらされます。
そのような長距離にわたる信号の伝達が必要な場合、一般的にはノイズを後から消せる「バランス信号」を使用します。
ごくシンプルに説明すると、DIとはアンバランス信号をバランス信号に変換するもので、プリアンプにはこのDI機能をあわせて搭載したものも多く存在します。
この点も含めペダル型のプリアンプは使い勝手に優れていると言えます。
プリアンプの基本的な使い方を解説!
プリアンプの役割が分かったところで、ここでは基本的な使い方を見てみましょう。
基本操作
ツマミの種類や細かい機能は機種によって異なりますが、基本的には通常のエフェクターと同じように電源を供給して(9v電池、アダプターなど)、シールドでベース→プリアンプ→アンプと接続すれば使用できます。
EQツマミ(Treble、Bass、Midなど)による音質調整、Drive、Gainなどのツマミによってオーバードライブの深さを調整できるモデルもあります。
これらの点は基本的にはヘッドアンプと同様の使い勝手ですね。
繋ぐ位置による使い分け
プリアンプの使い方でポイントになるのが、他のエフェクターと併用する際の接続順です。
ベースの直後に置く
という接続順になります。
プリアンプで調整された音がエフェクターを通る形です。
この使用法のメリットは、最短でインピーダンスを下げられる点です。
早い段階でインピーダンスを下げることで、音痩せやノイズに強くなります。
またこのプリアンプから信号をPAに送る場合は、その後段のエフェクトが反映されないことになるので、客席側の出音をPAに一任したい場合はこの繋ぎ方がよいでしょう。
アンプの直前に置く
という接続順で、エフェクターで加工した音をプリアンプで調整してアンプに送るイメージになります。
この使用法のメリットは、プリアンプからPAに送る音にもエフェクターがかかる点。
自分の理想的な音をPAに送ることができます。
また、ヘッドアンプのRETURNにプラグインすることでヘッドのプリアンプはスルーして、パワーアンプだけを使用することも可能です。
これによって、よりヘッドアンプの特色を薄めて自分のプリアンプをメインにした音作りが可能になります。
エフェクターの間に置く
という接続順。これはプリアンプを歪みエフェクターとして使用するイメージです。
例えば「歪みはフィルター系の後、空間系の前に置きたい」という場合、間にプリアンプを歪みペダルとして置く、ということですね。
また「フィルター系までPAに送りたいが、空間系はアンプだけにかけたい」というような場合も、プリアンプを配置する位置によってPAに送る音質を調整することができます。
全てのベーシストにおすすめしたい定番プリアンプ
Tech 21 / SansAmp Bass Driver DI V2
Tech 21のベースプリアンプといえば、黒い筐体に黄色の文字が特徴の「SansAmp Bass Driver」を思い浮かべる方も多いでしょう。
このV2はその最新モデルです。
今までにはなかったMidコントロールが追加され、さらにMidとBassの帯域調整を変更するスイッチによってさらに細かい音作りが可能になりました。
SansAmpの音の特徴として独特の「ドンシャリ」が挙げられますが、この新モデルは「旧モデルより落ち着いたサウンドで、使いやすくなった」という口コミが多く見られます。
9v電池、アダプターによる駆動はもちろん、XLR端子を通した48vファンタム電源による駆動によってさらに広いダイナミックレンジが得られます。
旧モデルよりクセが無いという点で、DI付きプリアンプをとりあえず何か一台買うならこれ、という定番度合いがさらに増したと言えるでしょう。
MXR / M80 Bass D.I.+
上記のSansAmpと双璧を成すベースプリアンプの大定番がこちらのMXR M-80です。
クリーンチャンネルはクセのない原音補正型でベース本体の良さを引き出します。
スイッチ一つでプリセットトーンを呼び出し、バキバキのドンシャリサウンドを作る「Color」スイッチも人気の秘密。
歪みチャンネルは荒々しい歪み方で、非常にハイゲインなディストーションです。
この機種は歪みチャンネルが独立しており、さらに「Blend」ツマミで原音と歪みの混ぜ方を調節できるので、「歪みのクセはあるが使いやすい」のもポイントです。
48vファンタム電源駆動にも対応し、DIとしても使用可能と多機能です。
そこまで高機能は必要ないという方には、コンパクトサイズながらサウンドは引けを取らない「M81」もラインナップされています。
Tech 21はちょっと合わないな、という方にはぜひ試していただきたいMXRのプリアンプです。
BOSS / BB-1X
老舗エフェクターブランド、BOSSによるコンパクト型のプリアンプがこちら。
歪みエフェクターとして紹介されることが多い本機ですが、BOSSの最新技術をフル活用した上質なサウンドやユーザビリティの高さにより、プリアンプとしても非常に人気の高いモデルです。
太くパンチのあるサウンドに、かなり深く歪むのにニュアンスを失わないダイナミクスの広さで、繋ぐだけで音のクオリティを一段上げてくれるイメージです。
特筆すべきはこのサイズでTRSバランスアウトを備えており、PAやレコーダーに直接接続が可能で非常に便利です。
このサイズと価格帯では間違いなく第一候補になる機種です。
One Control / Blue 360 AIAB
ポケットサイズの小型ながら高品質のエフェクターで定評のあるワンコントロールのベースプリアンプがこちら。
「ロック黎明期の70年代に重宝されたAcoustic 360プリアンプと361キャビネットのセットのサウンドを再現」
とあるように、当時のいい音をコンパクトサイズで得られるというとても嬉しいエフェクターです。
超小型なので決して多機能ではありませんが、「ギグバッグに忍ばせておいてどこでも持っていける&とりあえず繋いでいい音が出せる」という非常に使いやすいペダルです。
値段もお手頃なので、試してみて損はないでしょう。
まとめ
今回はベース用プリアンプについて見てきました。
音を変化させるエフェクターとしてだけではなく、広い可能性があるのがプリアンプです。
使っているうちにPAとの関係も含めた音作りなど、様々な面で勉強にもなります。
お気に入りの一台が見つかれば幸いです。
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