GIBの嵯峨(@SAxGA)です。
GIBで提供しているサービスの中で、弦振動に関するパーソナルセットアップはありがたいことに非常に好評で、リピートしてくださる方も少なくありません。
ギターやベースをセットアップする上で重要な要素はたくさんありますが、中でもサウンドに大きな影響を及ぼすのがピックアップの高さ、弦とのクリアランスです。
今回の記事では楽器をセットアップするプロセスの中のピックアップの高さ調整にフォーカスをあてて、解説します。
サウンドも比較したので実際に聴いてみてください。
ピックアップの構造
ピックアップの構造は実はシンプルで、磁性体であるポールピースの周りにワイヤーをまいている(コイルを作っている)だけです。
小学生の時に電磁誘導を習ったことがあると思います。
電磁誘導とは簡単に説明すると(簡単にしか説明できないんですけど……)コイルの中の磁性体を上下させると電気が生まれるよ、っていう原理で、ピックアップはまさにそれを利用しています。
説明した通り、学生の時にならった電磁誘導はコイルの中の磁性体を上下させてるわけですけど、実際のベースやギターではポールピースは固定されています。
それではなぜ電磁誘導によって音が出ているのかと言うと、磁性体であるポールピースから発生した磁界の中で磁性体である弦が動いているからなんですね。
この理屈をざっくりとでもわかった上で、実際のセットアップに入っていきます。
音の好みは人それぞれだけど絶対に念頭に置きたいポイントはSN比
ピックアップの距離によってサウンドは変化して、近づけるとパワフルに、遠ざけると音が少し均されたような、フラットなニュアンスになります。
これは好き好きだとは思いますが、1点確実に誰の目から見ても論理的に正しいポイントがあります。それはSN比です。
PUに弦が近付けば近付くほど、当然弦の音は大きくなりますよね。
ところが、ノイズ量は弦の近さにかかわらず一定です。
ということは、弦の音が大きければ大きいほどノイズは相対的に小さくなるわけです。これをSN比と呼びます。
SN比が悪くて良いことは1つもないので、この論理で言うと弦にPUを出来るだけ近づけたほうが良いですね。
かといってPUを弦に近づけすぎた時に起こる問題もあります。
PUは磁石なので、磁性体である弦の動きに影響を及ぼします。
この影響が大きくなりすぎるとピッチが悪くなったり、振動が不安定になってしまったりします。
これら2つを加味すると、弦振動に影響が出ない程度にPUを近づけるのが正しい、というロジックが成立しますよね。
実際に調整する時に気を付けたい数字
僕はPUの高さを調整する上でまずは前述した点、「弦に影響が出ない程度にPUを近づける」ということを数字だけをみて行います。
「弦に影響が出ない程度にPUを近づける」の数字を自分の中で持っていて、とりあえずそれにすれば最低限にはなる、ということですね。
具体的には、最終フレットをおさえて、つまり弦がPUに最も近づくシチュエーションで最低でも2.0mmの間隔を設けます。
これはポールピースと弦との距離、という意味です。
この数字にしている理由は経験上、これよりもPUを近づけると弦振動に影響するからです。
弦振動の大きさに準じて音量も変わるので、この点はPUの高さで調整することになります。
なので、ジャズベースを例に出すとフロントよりリア、低音弦よりも高音弦の方がよりPUを近づける必要があります。
以上から最も音量の低いリアPUの高音弦側、ここの弦とのクリアランスを2.0mmに設定します。
続いてリアPUの低音弦側は2.5mm、フロントPUの高音弦側は2.5mm、低音弦側は3.0mmにします。
これはとりあえずの数字で、ここからは楽器やプレイヤーに合わせて微調整を行います。
元々ピックアップの高さがすごく低い場合(弦とのクリアランスが4.0mmとか)、これだけでグッと押し出し感のあるクリアな音像になります。
ちなみに、パワーが強いPUの場合は当然もう少し遠ざけたほうがベターですし、EMGなんかのポールピースが出ていないタイプではもう少し近づけても大丈夫です。
逆に、プレシジョンベースのように弦振動が大きい場所にあるPUの場合は2.5-3.0mmのクリアランスは保ったほうがいいです。
サウンドサンプル
セッティング別にサウンドを録音したので聴いてみてください!
フロントピックアップ
非おすすめセッティング(4.5-5.0mm)
おすすめセッティング(2.5mm-3.0mm)
リアピックアップ
非おすすめセッティング(4.0-4.5mm)
おすすめセッティング(2.0mm-2.5mm)
ミックス
非おすすめセッティング(フロント4.5-5.0mm リア4.0-4.5mm)
フィンガー
スラップ
おすすめセッティング(フロント2.5-3.0mm リア2.0-2.5mm)
フィンガー
スラップ
プレイヤーの特性に合わせたセッティング
楽器の調整は単純に画一的なものではありません。
なぜなら、楽器は演奏者(プレイヤー)がいて、プレイヤーの趣味や好みといった特性に合わせたセッティングをする必要があるからです。
いくつかのシチュエーションを例に出して、その時に気を付けたいことを考えてみましょう。
ピック弾きがメインのロックベーシスト
ピック弾きがメインで、弦振動が常に大きいベーシストの場合に、まず気を付けなければならないのはクリップ(歪み)です。
ピックアップを近づけ過ぎていたり弦振動が大きすぎたりすると、過大入力が入ったアンプのようにサウンドは歪み、コンプレッションが掛かります。
この動作は基本的にはネガティブなもので、それを防ぐためにピックアップの高さを下げ目にします。
例えば、ジャズベースならリアPU高音弦側で2.5mm、低音弦側で3.0mm、フロントPU高音弦側で3.0mm、低音弦側で3.5mm、といった具合です。
クリップしない、弦振動に影響しない、といった範囲で出来るだけ近づけてみるといいですね。
強い音程感を求めるベーシスト
ドロップチューニングを多用する方や、ヘヴィなアンサンブルだから強い音程感を求める方の場合、僕はJBのリアピックアップを高めに設定することがあります。(逆に言うとフロントを下げ目にする)
ジャズベースは両方のピックアップをミックスで使う場面がほとんどで、2つのピックアップのバランスでサウンドを微調整出来ます。
より硬くタイトなサウンドのリアを相対的に大きめにすることによって最終的なサウンドを音程感のある、タイトなものに出来ます。
もしもそのようなサウンドを求めるのであれば、フロントPUを少し下げ目にしてみると良いと思います。
サウンド
オープンなスラップのニュアンスを求めるベーシスト
スラップ時によりオープンでわずかなコンプレッションを求められた場合、フロントピックアップを高めにすることがあります。
これによってフロントPUの弾力のあるサウンドがより強く反映され、心地よいスラップ音に適したセッティングになります。
サウンド
動画
まとめ
こちらの記事ではピックアップの高さによって異なるサウンドや調整する時に気を付けたいポイントについてまとめてみました。
ここに書いたことは僕がPUの高さ調整で考えることのほぼ全てです。
楽器についての知識が深くなると、プレイも絶対に変わると思います。ぜひ試してみてください。
(Geek IN Boxも掲載されています)
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