世界中で長い間愛されているベース、プレシジョンベースとジャズベース、これらって何が違うのでしょうか?
プレシジョンベースとジャズベースはフェンダー(Fender)が製造しているベースのモデルです。
ピックアップやボディシェイプ、ネックの太さなどあらゆる面に違いがみられますが、これらについて改めて確認してみましょう。
プレシジョンベース(PB)の歴史
プレシジョンベース(Precision Bass)は1951年にフェンダー社によって初めて製造されたベースです。1957年には現在発売されているプレベとほとんど変わらないデザインになりました。
そのため、1957年以前に製造されたプレベをオリジナルプレシジョンベース(OPB)と呼ぶことがあります。
ロックンロールの台頭とともに、そのファットなトーンはリズムセクションで重要な役割を果たし、1960年代にはポップスやロックなどのジャンルで広く使用されてきました。1970年代以降もファンクやパンクなど多様な音楽スタイルで重宝され、現代でもそのトーンとデザインはミュージシャンに支持され続けています。
ジャズベース(JB)の歴史
ジャズベースはプレシジョンベースの上位機種として1959-1960年に登場し、1960年代にその影響力が大きく広がりました。当初はジャズミュージシャン向けに設計されましたが、そのクリアなトーンとスリムなネックは多様な音楽ジャンルで活躍しました。
レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ らが愛用し、ロックやポップスなどで広く使われました。また、ジャコ・パストリアス、マーカス・ミラーの登場もあり、ハーモニクス奏法、スラップ奏法などの新しいテクニックが導入されました。ジャズベースは、ベースギターの進化と多様性を象徴するモデルとして、音楽史に名を刻みました。
プレベとジャズベのルックス・サウンドの違い
プレベとジャズベには、見た目や音の違いがいくつかあります。それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
ボディシェイプ
プレベはくびれが左右対称なボディシェイプが特徴です。ボディの上下が膨らんでいるような丸みも特徴的。このデザインは、プレシジョンベースが初期のエレクトリックベースギターのデザインに影響を受けていることが関係しているそう。シンプルな構造です。
ジャズベのボディシェイプは、より洗練されたカーブとエッジを持つデザインです。プレベと異なり、ボディの特にくびれ部分は左右非対称(アシンメトリー)になっています。このデザインはベーシストの体にフィットしやすく、安定して演奏を可能にしました。
ネックとナット幅
プレベのネックは比較的幅広く、ナット幅は通常1.625インチ(約41.3mm)程度です。幅広い指板とナット幅は、ストリングス間のスペースを確保し、演奏時に指の運動を楽にする特徴があります。これにより、フィンガースタイルのプレイヤーや大きな指を持つ人に適したネックとなっています。
一方、ジャズベのネックはやや細く、ナット幅は通常1.5インチ(約38.1mm)から1.625インチ(約41.3mm)程度です。このネックの細さは好みが分かれる部分ですが、この点を好んでジャズベを使用する方も少なくありません。
ピックアップ
プレベは通常、スプリットコイルピックアップを1つ搭載しています。このピックアップは、ベース全域でパンチのあるファットなトーンを提供します。
低域の迫力と存在感のあるサウンドが特徴で、特にロックやファンクの演奏に向いています。
ジャズベは、通常2つのシングルコイル型ピックアップを搭載しています。
ネック側のピックアップはウォームでマイルドなトーンを、ブリッジ側のピックアップは明るく明瞭なトーンを提供します。そしてそれらをミックスしたサウンドはパワフルで美しく、非常に整ったバランスを持ちます。
これにより、ジャズからロック、フュージョンまで多様な音楽スタイルに適したサウンドを実現します。
コントロール
通常、プレベのコントロールは比較的シンプルです。一般的には、マスターボリューム(ボリュームノブ1つ)とトーンコントロール(トーンノブ1つ)が装備されています。このシンプルなコントロール配置は、操作が直感的でありながらも、ファットなトーンの調整に対応しています。
ジャズベは、通常2つのピックアップを持つため、コントロールがやや複雑になることがあります。一般的なコントロールは、マスターボリューム(ボリュームノブ1つ)、ブレンドコントロール(ピックアップのバランスを調整するためのノブ1つ)、およびトーンコントロール(トーンノブ1つ)です。これにより、2つのピックアップの組み合わせやバランスを微調整し、クリアなトーンを調節できます。
サウンド
プレベは高音弦側用と低音弦側用の2つのピックアップを直列(シリーズ)に繋ぐことで、ノイズの少ないパワフルなサウンドになっています。
スプリットコイルピックアップが提供するサウンドは、豊かな低音と中音域の存在感を持ち、力強さと迫力を演出します。特にロックやファンクなどのジャンルで使用され、リズミカルなグルーヴを支える役割を果たします。
一方ジャズベースは2つのシングルコイルピックアップがフロントとリアに配置され、これらは並列(パラレル)で接続され、そのバランスを調整する事ができます。
これにより、ジャズベースはプレシジョンベースよりもワイドレンジなサウンドになっています。2つのピックアップをミックスするとミドルが少しだけ凹み、スラップに適したサウンドを得やすいといえます。
当然ですが、2つのピックアップでハムキャンセル効果を得ているので、どちらかにバランスを傾けるとハムキャンセル効果は薄まり、ノイズが出ます。
プレシジョンベースを愛用しているアーティスト
プレシジョンベースを愛用している世界的に有名なベーシストを紹介します。
James Jamerson(ジェームス・ジェマーソン)
ジェームス・ジェマーソン(James Jamerson)は、20世紀の偉大なベーシストであり、モータウンの「ファンク・ブラザーズ」の一員です。
彼は1962年製のプレベを愛用していました。彼のフィンガーピッキングとメロディックなアプローチは、ベースの役割を変革し、リズムとメロディを融合させたプレイスタイルを確立しました。その影響はジャンルを超え、多くのベーシストに感銘を与えています。
Willie Weeks(ウィリー・ウィークス)
ウィリー・ウィークスはアメリカのベーシスト。セッションミュージシャンとして幅広いジャンルで活躍し、スティーヴィー・ワンダーやエリック・クラプトン、アレサ・フランクリン、ジョージ・ハリスン、デヴィッド・ボウイ、ドゥービー・ブラザーズなど名だたるミュージシャンとの共演でも知られています。
彼は1962年製の赤色、1958年製のメイプル・ネック、1963年製のサンバーストのプレベを使用していました。
ジャズベースを愛用しているアーティスト
ジャズベースを愛用している世界的に有名なベーシストを紹介します。
Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)
ジャコ・パストリアスはアメリカのベーシストで、モダンベースギターのパイオニアとされています。彼はジャズフュージョンバンド「ウェザー・リポート」のメンバーとして知られ、独自の奏法やハーモニクスのテクニックを取り入れた先駆的なスタイルでジャズベース界に革命を起こし、多くのアーティストに影響を与えました。
彼は3トーンサンバーストの1960年製とフレットレスに加工した1962年製のジャズベースを愛用していました。
Marcus Miller(マーカス・ミラー)
マーカス・ミラーは、アメリカのベーシスト、作曲家、プロデューサーで、ジャズとフュージョンの分野で著名な存在です。彼はテクニカルでスムーズなベースプレイで知られ、世界的に影響力のあるミュージシャンとしての地位を築きました。
彼が愛用しているのはSadowskyによってアクティブ回路搭載に改造された1977年製のジャズベース。このほかにも、75年製やフレットレスのジャズベも使用しています。また、Sireからは彼が監修したベースが発売されています。
おすすめのプレシジョンベースを紹介
Fender Player Precision Bass
アルダー材のボディ、メイプルネック、シングルコイルピックアップを搭載し、クラシックなPベースの力強くドライブ感のある低音を忠実に再現します。プレイヤーレベルのベーシスト向けに設計され、高品質な材料とクラフトマンシップを備えています。
演奏性とサウンドのバランスが優れており、ロック、ファンク、ブルース、ポップスなど、幅広いジャンルに適しています。
Fender American Vintage II
Fenderのヴィンテージスタイルギターシリーズで、クラシックなFenderデザインとサウンドを現代のプレイヤー向けに再現したもの。高品質な材料とクラフトマンシップを備え、ヴィンテージ外観とサウンドを忠実に再現しながら、現代のプレイヤーの要求に合致するアップグレードが施されています。
アメリカ製の品質と音楽の歴史に敬意を払いつつ、現代のミュージシャンにとって魅力的なギターシリーズとして提供されている。クラシックなFenderサウンドを追求するミュージシャンに向けて、演奏性とトーンの両面で優れた選択肢です。
Squier Affinity Series Precision Bass
Fenderの子会社であるSquierが製造するエントリーレベルのエレキベースモデルで、手頃な価格で高品質なベースプレイを提供します。通常、ポプラ材のボディ、メイプルネック、分割コイルのPrecision Bassピックアップを搭載し、クラシックなPrecision Bassのサウンドを提供します。
アイコニックなデザインと信頼性に富んだサウンドを手頃な価格で提供し、ベーシストに広く支持されています。
おすすめのジャズベースを紹介
Fender Player Plus Jazz Bass
こちらはPlayer Plusシリーズの一つで、クラシックなJazz Bassデザインにモダンなアップグレードが施されています。アルダー材ボディ、ノイズレスピックアップ、18Vアクティブプリアンプシステムを備え、クリアで多彩なトーンを提供。ジャズ、ロック、ファンク、フュージョンなど、多様な音楽スタイルに適しています。
Fender American Professional II Jazz Bass
高品質なアルダー材ボディとメイプルネックを備えた、モダンでスタイリッシュなJazz Bassです。V-Mod IIピックアップとアクティブプリアンプにより、クリアでヴィンテージなサウンドから多彩なトーンを実現。プロのミュージシャンや上級者向けに設計され、プレイアビリティとサウンドの両面で高いパフォーマンスを提供します。
Squier Affinity Series Jazz Bass
こちらは、初心者や価格を抑えたベースを探している方向けの手ごろなエントリークラスのベースです。ポプラ材のボディ、メイプルネック、シングルコイルジャズベースピックアップを備え、クラシックなジャズベースサウンドを提供。2基の音量コントロールとマスタートーンコントロールを持ち、使いやすい操作性が特徴です。ジャズ、ロック、ファンクなど、さまざまなジャンルに適しており、ベースプレイを始めるには理想的な選択肢です。
まとめ
Fenderの2つの代表的なベースモデルであるプレシジョンベースとジャズベースの違いやそれぞれの特徴、愛用しているミュージシャンやおすすめのモデルについて紹介しました。
プレシジョンベースとジャズベースは、それぞれ異なるサウンドとプレイスタイルに適しており、多くのプロベーシストに支持されています。選択は個人の好みに依存しますが、どちらも優れたベースギターモデルであり、音楽の幅広いジャンルで活躍します。
プレベとジャズベの違いについては、これらの動画でも解説していますのでぜひこちらもチェックしてみてくださいね。
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