音作りは奥が深く、バンドマンの永遠のテーマと言えます。今回音作りの基本であるイコライザー(以下EQ)に焦点を当てて、ベースの音作りのコツを紹介したいと思います。
1.視覚的に見るバンド内でのベースの立ち位置
はじめに各パートの音の配置を視覚的に見てみましょう。(図1)
帯域的に見れば低音を担当しているのはベースとバスドラムです。そして定位的には演奏の基盤となるベース、バスドラム、スネア、ボーカルがセンターに配置されています。つまり帯域、定位の両方でベースは他パートと重なりやすいのです。
後から説明するマスキングを最小限にすることが今回のテーマなので、この音の配置はよく覚えておいてください。
2.アナライザーでベースの音を分析
次に4弦プレべ(パッシブ)の音をアナライザーで見てみましょう。(図2)
ラインの方はベース本体の音になりますが、60~280hz付近が中心にこの時点で必要な低音は十分出ています。またアンプでは100hz辺りに密集した低音、一番上は10khzまで出ています。さらに1~5khzのギターやボーカルが得意な中高域も意外と出ており、エレキベースは帯域が広いのです。
3.ベースが埋もれる原因
音の輪郭成分が出ていない
先程取り上げた図の1~5kHzの帯域がきちんと出ていないと音の輪郭が見えづらく、埋もれる原因になります。
まずは以下の点をチェックしましょう。
・ベース本体のつまみは適切か。
・弦が古くないか。
・シールドは良質なものか。
アンプに音が入る以前に原因があることもよくあるので、まずはこの3点を確認しましょう。トーンを絞って柔らかい音を出す場合もありますが、会場によっては音が広がり芯が見えづらくなるので、トーンの下げ過ぎには注意しましょう。ちなみに出ていない帯域をEQでいくらブーストしても、その帯域は持ち上がりません。
他のパートでマスキングされている
マスキング効果(コトバンクより引用):
ある音が他の音によって妨害され、遮蔽されて聞えなくなる現象をさす。
2つの音が純音の時、周波数の差が小さいほどこの効果は大きい。
一般に低音は高音をよく遮蔽するが、高音の低音に対する遮蔽効果はそれほど顕著ではない。
上記をベースの観点から言うと、ベースと周波数が近いのはバスドラムです。(図3)
バスドラムの主な帯域は45~90hzぐらいです。仮にベースとバスドラム、それぞれ全く同じ帯域をブーストすると、互いの音を打ち消し合います。それゆえ音がうるさく聞こえるのに迫力を感じない状態になります。
そこでミックスでは、バスドラムは100~200hz、ベースは60~90hzといった帯域はカットし、それぞれのスペースを確保しあいます。またベースの低音が出過ぎているとスネアやギター、ボーカルなど中高域を担当するパートを邪魔する原因にもなります。音が太すぎるとかえって抜けないと言われるのも、このマスキングによるものです。
4.アンプのEQは音の補正、シチュエーションにあった設定を心がける
ここまでの内容をある程度心がければ、アンプのEQをどのような設定にすれば良いか、なんとなく分かるかもしれません。まず四弦解放のE音を鳴らしながら、ドラムや他の楽器の出音を見て、まずは~250hzまでの低域を調整しましょう。
バンドメンバーの出音によって処理する帯域は変わってくるのですが、バスドラムの帯域(45~90hz)はある程度カットします。また100~250hzはギターやスネアが出している中低域なのでブースト時は注意が必要です。ギター側で低音を下げてもらってもいいかもしれません。そしてスタジオや会場での響きやアンサンブルでの音の混ざり方をみて、音の前後感を調整するなら500hz~1khzの中音域、ピッキングのアタック成分を調整するなら2khz~以降の高域をEQでブースト/カットしてみましょう。
また低音が回りやすい会場では、50hz以下の超低域が会場内で膨らみやすい傾向にあります。この超低域はベース以外の楽器からも出ている可能性があり、マスキングの原因となるのでベースアンプでカットしてスッキリさせるとよいでしょう。
低音のマスキングに気を付けながら、ベースが担当すべき低域とベースラインが見える中高域を出すことでアンサンブルで存在感のあるベース音になります。最後にアンプのEQがどのように働くのか把握しておきましょう。定番アンプのHARTKE HA3500Aは(図4)のようなイメージです。
グラフィックイコライザー:調整する帯域をピンポイントでブースト/カット(Peak)。Contour Low/High Pass control:100hz以下(Low)、10khz(High)以上をまとめてブースト/カット(Shelf)。他のアンプでも型式を検索すれば、EQの働きが取説に記載されてますので、調べてみることをおすすめします。
ベースと他パートの帯域の関係性とEQの働きを理解することで、状況に合わせた音作りができるようになります。是非参考にしてみて下さい。
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