
はじめに
Fenderが生み出したエレクトリックベースの名器「Jazz Bass(ジャズベース)」は、1960年に登場して以来、今もなお多くのベーシストに愛され続けています。
本記事では、このJazz Bassの誕生背景や仕様の変遷、そして現在までに至る魅力を詳しくご紹介します。
Fender Jazz Bassの歴史
Fender社は1939年にK&Fという名称で創業され、1946年に「Fender」と社名を改めました。
その後、1950年にはテレキャスターの原型となるエスクワイヤー、1951年には世界初の量産型エレクトリックベースであるプレシジョンベースを発表します。
これらが市場で成功を収めたことを受けて、次なる新製品として開発されたのが、ジャズマスター、ジャガー、そしてJazz Bassでした。Jazz Bassは1960年に正式にリリースされ、実はその前年である1959年にはプロトタイプも存在していたようです。
Fender Jazz Bassの特徴
ボディシェイプ
ジャズベースの特徴としてまず挙げられるのは、そのボディシェイプです。先行するプレシジョンベースよりもさらに左右非対称な「オフセットボディ」が採用されており、体へのフィット感や演奏性の向上が図られています。
このオフセットデザインは、同時期に登場したジャズマスターやジャガーにも共通するもので、当時のFenderがいかに先進的な設計思想を持っていたかが伺えます。
ナット幅
仕様面では、ナット幅がプレシジョンベースよりも狭く、38mmという細身のネックが特徴です。これにより、手の小さなプレイヤーでも握りやすく、テクニカルなフレーズにも対応しやすくなっています。
また、ピックアップにはシングルコイルが2基搭載されており、両方を同時に使うことでハムノイズを打ち消す「ハムキャンセル効果」も得られる構造です。
木材
加えて、Jazz Bassの音色を語る上で欠かせないのが「木材の違い」です。
1960年代の基本仕様ではボディにアルダー材、指板にはローズウッドが使用されていました。これにより、ウォームでバランスの取れたサウンドが得られます。
一方、1970年代に入るとアッシュボディとメイプル指板の組み合わせが登場し、より明るくパリッとした音像と、ナチュラルカラーのルックスが定番になっていきます。木材の違いによって、演奏性だけでなく、音のキャラクターや見た目の印象にも大きな差が生まれるのが、Jazz Bassの面白いところです。
電装系
電子回路にも変化がありました。登場初期は「スタックノブ」と呼ばれる2ボリューム2トーン構成でしたが、1961年には3ノブ式(各ピックアップのボリュームとマスタートーン)へと変更され、操作性が向上しました。
さらに、70年代以降はピックアップの位置がやや後方に移動したことで、よりパンチのあるサウンドが得られるようになります。
まとめ
このように、Jazz Bassは時代ごとに仕様や素材が変化してきたため、自分の好みに合ったモデルを選ぶ楽しさも大きな魅力です。
ネックの太さ、木材の種類、塗装の仕上げ、ピックアップの構成など、どれも音と弾き心地に直結する重要な要素です。スペック表だけで判断するのではなく、実際に手に取って確かめることで、自分にとって最適な一本に出会うことができるでしょう。
Jazz Bassは、ヴィンテージ感にこだわる方から最新モデルを好む方まで、幅広い層に対応できる奥深さを持っています。歴史的背景、仕様の変化、演奏性とサウンドの幅広さ。どれを取っても、Fender Jazz Bassが“最高傑作”と呼ばれる理由がよく分かります。初めて手に取る一本としても、こだわりを持って選び抜く一本としても、Jazz Bassは非常に信頼できる選択肢と言えるでしょう。