楽器屋さんが行うラッカー塗装のギターの手入れの仕方、スタンドの使い方、ポリ塗装との違い

GIBの嵯峨です!フェンダーやギブソンといった大手メーカーが最初期から使用しているラッカー塗装を皆さんはご存知でしょうか? ラッカー塗装はギターにおける最も伝統的な塗装方法で、現在もトラディショナルなモデルや高価なモデルにはラッカー塗装が用いられることが多くあります。「鳴りが良い」「使い込むほどにダメージが入るのがかっこいい」と評判のラッカー塗装ですが、取り扱いには注意が必要なデリケートな塗装であることも事実。今回はそんなラッカー塗装の簡単な説明やポリウレタンとの違い、手入れの仕方、スタンドの使い方などについて解説しようと思います!

先に結論から書くと、柔らかい塗装なのでハードに磨きすぎないでください! スタンドはラッカー塗装対応と書いてあってもそれは信じず、クロスや専用の製品で保護してください!

ラッカー塗装とはそもそもなに?

ラッカーとは、塗布することでボディやネックなどの木部を外気から守ることのできる塗料です。揮発性の高い溶剤に樹脂を溶かした構造で、これを塗布し、溶剤が気化することで塗装膜を形成します。ラッカーの中でもアクリルラッカー、ウルシオールラッカーなどの種類がありますが、ギターやベースで大変人気のあるものはニトロセルロースラッカーと呼ばれる種類。古くは1920年代からの自動車産業に広く用いられていました。乾燥すると自然と薄くなっていくため、高度な技術がなくても薄い塗装が可能なのはラッカーならではのポイント。表面が硬化しても揮発はしばらくの間続くため、ラッカー塗装の上にポリウレタンなどの塗装を拭くと揮発した気体によって塗装が割れてしまうので注意が必要です。(これを利用したフィニッシュもあります)

ラッカー特有の”ウェザーチェック”

ラッカー塗装がクールだとされる大きな点の1つが”ウェザーチェック”です。上の写真で線が入って塗装が割れているのがわかりますか? これがウェザーチェックです。ウェザーチェックとは、気温や湿度の変化によって木材と塗装が収縮し、その収縮率の違いによって出たギャップを原因に塗装面が割れてしまったものを指します。ウェザーチェックは強度の強いポリウレタンには現れず、ラッカーである証だと言えます。ちなみに、ポリウレタン塗装のギターに人工的にウェザーチェックを作ることも可能で、その方法はカッターで切る(笑)。最初にやった人、安直でナイスです。

ポリウレタン塗装との違い、見分け方

 

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ラッカー塗装とポリウレタン塗装ではいくつかの面で違いがありますラッカーはウェザーチェックが現れ、塗膜は弱く、乾燥は揮発、シンナーで溶けます。逆に、ウレタンはウェザーチェックは現れず、塗膜は強く、乾燥は化学反応、シンナーには強さがあります。ウレタンの方が乾燥が早く、厚塗りが可能なので塗装にかかる時間が少なくコストをかけずに仕上げられるために安価なギターではポリウレタンが主に使われます。(ポリエステルなども)

ポリウレタン塗装とラッカー塗装を見分けることは非常に困難です。確かな方法の1つはキャビティ内などの目立たないところにシンナーを塗ってみること。これで塗膜がダラっと溶けてくるようでしたらラッカーだと考えて間違いありません。見た目でいうと、ウレタンは透明度が高く強度も強いので傷の付き方が独特です。逆に、ラッカーは比べると少し白っぽくなりがちで、傷はつきやすいです。

塗装が剥がれている部分があればそこをチェックしてみてください。強度の違いにより、ラッカーは削れる感じで塗膜が剥がれますがウレタンはバリっとかさぶたのように塗膜が剥がれます。


ラッカー


ウレタン

ラッカー塗装のギターの手入れの仕方

ここで言う手入れはボディについた汚れの処理について。基本的にはポリッシュを使い、クロスで磨きあげますがラッカー塗装のギターに使うときにはポリッシュがラッカーに対応しているかどうかをまずは確認すべきです。現在ではほとんどのポリッシュがラッカーに対応しているといっても過言ではありませんが。多くの種類がありますが、僕がおすすめしたいのがKen Smithのポリッシュです。あらゆる塗装に対応していて、匂いも良く汚れを落とす能力も抜群。いくつか試しましたが、これがベストです。10年以上愛用しています。

また、表面にヤニ汚れがついていたりすると研磨剤で磨いてしまうことがあります。ラッカーでもやります。研磨剤は金属磨きとしても使えるので、ペグやブリッジなどのハードウェア、フレットなどに使用可能です。ここでおすすめしたいのが、ピカールとスクラッチメンダー。ピカールは粘度が弱いので広い範囲への塗布が必要な時におすすめで、スクラッチメンダーは粘度が高いので局所的に使いたいときにおすすめ。これらも10年ほど使ってます。

もしフレットを磨くならこれ絶対あったほうが良いです。指板をカバーしてフレットだけを露出させ、磨くためのものですね。僕はヘヴィーユーズしてます。

クロスで磨いていく際には強く楽器に押し付け過ぎないことをおすすめします。ラッカーはとても柔らかいので、クロスによる拭き傷が出来てしまうことも有ります。これは大小の差こそあれど、ウレタン塗装のギターでも同様です。可能であればクロスにもこだわって、柔らかいものを選ぶ方がベターです。

”ラッカー対応”はウソ? スタンド保管の方法

ウソとまでは言えないかもしれませんが、ゴム素材などの化学物質が塗装面に直接あたってしまうのはよくありません。少なくとも何カ月も放置するのは避けたいところ。そこでおすすめしたいのが布などで楽器に当たる部分をカバーすることですが、この布も雑巾のように目の粗いものでは塗装がまだ柔らかい場合、痕がついてしまうことがあります。できるだけ柔らかいものを使ってください。このような目的の場合、楽器店では”スタンドブラ””スタンドカバー”と呼ばれる製品がよくつかわれます。これはスタンドにワンタッチでとりつけられる”ふわふわしたやつ”で、ラッカー塗装の塗膜を保護してくれます。滑りやすくなってしまうのですが、背に腹は代えられません。使ってください。

まとめ

「 ラッカーの方が音が薄いから音が良い」「ウレタンでも薄く吹けるから強度のあるウレタンの方が良い」と諸説ある問題ですが、僕個人的にはラッカーは好きです。それはやはりフェンダーが使っていたからであって、フェンダーのレプリカを作るのならばラッカーでフィニッシュするのは当然だろうと考えます。しかし、美しく仕上げられるのであればウレタンも優れたフィニッシュで、特にモダンなスタイルであれば積極的に活用していいのではないかと思います。

……でもやっぱりラッカーが良いなぁ。

大手楽器店での販売、修理業務やプロベーシストのローディー経験の後に海外向けの小売業に従事。その後ベースショップGeek IN Boxを立ち上げ、現在はGeek IN Boxの運営の他にベースマガジンなどでの執筆を多数担当。

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