[動画有]ベースのレコーディングにおけるマイク録り、ライン録りによる音の違いを比較

DAWやMTRが普及し録音が手軽になってきたものの、ベースのレコーディング方法は奥が深く研究が必要なことに違いはありません。ベースの録音方法は大きく分けてアンプマイク録りダイレクトボックス(DI)などを使ったライン録りの2種類がありますが、セッティングや機材によって収録出来るサウンドは大きく変わります

今回はレコーディング方法による違いの比較ということで、マイク録りはタイプの違うものを3種類、ライン録りはDIによるライン録りとアンプヘッドのDI OUTの2種類、そしてライン録り後のアンプシミュレーター1種類による合計6種類を比較します。

比較のために、今回はシンプルなパート構成のアコースティックな楽曲を動画内で演奏し、比較しています。アコースティックな雰囲気に合う温かい音をテーマに音作りしてみましたので、ぜひご覧下さい。

動画はコチラ(記事の最後にもリンクを貼るので、読んだ後にまたご覧になってみてください!)

Contents

DI・マイク以外の収録機材


ベース本体:Sago Classic Style-P (プレシジョンタイプベース)


ベース弦: STRINGJOY


シールド: VOVOX Sonorus


ベースアンプ:AMPEG SVT-CL

マイク録り

空気感が求められる楽曲、アンプならではの迫力が欲しい場合にはベースアンプにマイクを立てて収録します。ベーシストの音作りがそのまま収録できるとあってプレーヤーに馴染みがあり、ライン録り主流の現在でも現場でリクエストされることが多い収録方法です。

SHURE / SM57(楽器用ダイナミックマイク、単一指向性)


SHURE SM57-LCE

頑丈で素直なサウンドからアンプに限らず、ドラムや管楽器などオールマイティに活用出来るマイクです。マイクが音源に近づくことにより低音が膨らむ近接効果を考慮して、100hz以下がローカットされた仕様になっていますが、ベース本来の低音が削りとられた印象はなく、アンプ特有の空気感、ドライブ感などバランスの良いサウンドが録れています。

スタジオ標準機材なので、アンプの音を録りたいと思った時に用意しやすいところもいいポイントですね。


JTS / TX-2(バスドラム・ベース用ダイナミックマイク、超単一指向性)


JTS TX-2

宅録ユーザー御用達、コストパフォーマンスの高いマイク類を有する台湾のブランド、JTSの低音楽器向けマイク。50hz以下もしっかり捉え、低音に厚みを感じます。SM57より少しぼやけたサウンドになりましたが、このようなアコースティック系の楽曲ではマッチするのではないでしょうか?

この他通称タマゴと呼ばれるAKG D112などバスドラムの集音に使われるマイクを立てて、ベースアンプ特有の低音を収録するのに使われます。


RODE NT2-A(コンデンサーマイク、単一指向性)


RODE NT2-A

コンデンサーマイクの定番ブランド、RODEコンデンサーマイクは全帯域をフラットに繊細に収録出来る特徴があります。そのためタッピングやフィンガーピッキングのニュアンスが上記のダイナミックマイク2機種より分かりやすいですね。しかし感度がよい故に、必要のない音も拾いすぎてしまいます。それによって高い音圧に対しては、その迫力を捉えきれずダイナミックマイクに比べると少し頼りない印象があります。

しかしライン録りで芯のある低音部分を使い、ベーシストの音作りが反映されている中高音をコンデンサーマイクで収録した音とブレンドするなど、役割やシチュエーションを考慮した上で集音するなら選択肢に入れるべきでしょう。


マイクでの集音のコツ

 

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まずキャビネットのコーンの中で一番良く鳴っているもの、いい音がしているものを探ります。次にコーンのすり鉢のちょうど真ん中部分になるべく近づけて(オンマイクの状態で)マイクを設置します。そしてアンプから出す音量については、音作りをした上で、低音に迫力がある、音が潰れていないなど一番状態のいいポイントにボリュームを調整しましょう。

音量が大きすぎるとキャビネットが限界を迎えて、コンプがかかったような状態となり、迫力が出せません。

ライン録り

ライン録りはベースのレコーディングで最もよく行われている収録方法の一つです。接続がシンプルで、ベースの芯を捉えたクッキリとしたサウンドを収録することが出来ます。

AMPEG STV-CL(アンプのDI OUT)


Ampeg SVT-CL BASS HEAD

アンプのキャラクターをライン出力に反映させたい場合、アンプのDI OUTにXLRケーブルを接続して収録する方法が挙げられます。

AMPEG STV-CLはフルチューブということもあり、無機質なイメージのライン録りであっても心地よいドライブ感があります。その上マイク録りとはまた違ったワイドレンジな低音の太さとアタックを持ち合わせています。アンプの音が気に入っていて、しっかりとベースラインを見せたい場合に有効な収録方法でしょう。

なおEQの設定を反映させたい場合、アンプの裏面にあるPRE/POSTスイッチはPOSTの状態にしましょう。(※PREはEQの設定が反映される前段階の音がライン出力されます。PRE設定にするときはライブでベーシストはアンプで音作りした音を聞き、PAにはフラットの状態でラインの音を送りたい場合などが想定されます)

TDC-YOU / BASS DI (ダイレクトボックス)

TDC BASS DI

大阪のStudio Youが製造・販売を行なっているTDC-YOU。このBASS DIはDI機能に加え、真空管を通したようなアナログ感のある良質なドライブペダルとしても使うことができます。しかし今回はあえてBASS DIの持つキャラクターは使わず、スイッチはオフの状態でDI OUTしています。

ベース本体のキャラクターがダイレクトに感じられ、骨格のある締まったサウンド。そして従来のライン出力でイメージされる空気感がなく、無機質な感じではなく、このBASS DIはアンプから鳴っているような躍動感があります。スイッチオフでも艶があって、通すだけでライン出力がブラッシュアップされます。

下記にて詳しく取り上げているので、ぜひご覧ください。

ライブ、レコーディングの必需品! おすすめのベース用ダイレクトボックス(DI)

ライン録りのポイント

TONEの下げ過ぎやアクティブ仕様のベースの場合、ブーストのし過ぎに注意しましょう。収録したベースが持っていない音域をイコライザーで持ち上げることは出来ませんし、ブーストし過ぎた音をミックス時にイコライザーでカットすると美味しいポイントまで削られる可能性があり、非常に扱いづらいです。

極力元の音を修正方向でイコライジングしなくて済むよう、エンジニアさんと相談しながら進めましょう。

アンプシミュレーター

モデリング能力の高さから近年注目度の高いアンプシミュレーター。エレキギター向けのものが目立っていますが、ベースも同様に現場で十分に活用できる程ハイクオリティなものが多数登場しています。今回検証のための素材としてはTDC-YOU BASS DIで収録したライン録りのトラックを使用しました。

録音した後からじっくりアンプの設定を吟味することができる上、ライン録り出来れば場所を選ばずアンプのサウンドを取り入れることができ、汎用性が高いところがいいポイントです。

BIAS AMP DESKTOP(AMPEGのモデリング)

POSITIVE GRID BIAS AMP Desktop

DAW, Apple製品向けのプラグインソフトや実機のアンプヘッド、エフェクトペダルなど多数発表しているPositive Grid社のアンプシミュレーター。従来なかったアンプ内部の真空管、電源の選定、BIAS値の設定など、実機のアンプで比較が難しいファクターについてもクリック1つで聴き比べができるカスタマイズ性の高さが最大の特徴です。

AMPEGの持ち味であるギラッとした高音や、ドライブ感、低音の分厚さがそっくり再現されています。アンプのキャビネットに耳を近づけて聴いた時のニュアンスに近く、アタック成分もしっかりとあるのでベースラインが分かりやすいです。

動画

まとめ

以上となりますが、いかがでしょうか?ベースのレコーディングは他のパートに比べて比較的シンプルな方ですが、深掘りしていくとこれだけ違いがあります。ベースはライン録りが基本となりますが、楽曲によってマイク録り、アンプシミュレーター、またそれらのブレンドを使い分けていきたいところです。

上記は一例ですが、レコーディングで納得のいくサウンドとなるよう参考にしてみて下さい。

 

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