
Hi-StandardやWANIMAなどの活躍により、ベーシストがメインボーカルを務めるバンドを最近よく目にするようになりました。
しかし本来はアンサンブルを支えることが大前提のベース。
メインボーカルとして歌いながら演奏するにはそれなりの訓練が必要です。
またバンドのアレンジ上、楽器陣がコーラスを担当するケースもよくあると思います。
今回はベースを弾きながらリードボーカルやコーラスを歌う上での練習方法やコツ、ボイストレーナーが考える発声、そしてぜひ参考にしてもらいたいベースボーカリストを紹介したいと思います。
なぜベースボーカルは難しいのか?
パートの性質上、演奏せず歌だけに集中できる場面が少ない
例えばVo & Gt, Lead Gt, Ba, Drという編成の4人組バンドだったとしましょう。
Vo & GtはLead Gtがいることもあり、バッキング演奏が必ずしも必要ではなく、歌に専念できる場面が比較的多くあります。
それに対して同じ楽器編成でベーシストがメインボーカルの場合はどうでしょう?
ベースはアンサンブルで中核的なパートなので、バンドサウンドに必ず存在し、Vo & Gtのように演奏せず歌だけに集中する場面というのは楽曲のアレンジにもよりますが、ある程度限定されるはず。
従って常にベースを演奏しながら歌うことになるので、演奏の比重が大きく歌への余裕が生まれにくいことがベースを弾きながら歌うのが難しい理由として挙げられます。
ベースの演奏はリズムが一定でなく、運指の横移動も大きい
ギターボーカルや弾き語り系のシンガー担当するバッキングの多くはローポジションでのコード弾きや安定したリズムに則ったものです。
運指の移動範囲は限定され、リズムも有る程度一定と、基本的に運指もリズムも一定の演奏範囲で歌に集中することが出来ます。
一方ベースはルート弾きで単にリズムキープするだけでなく、シンコペーションやスタッカートなどでリズムに表情をつけていくところに大きな役割があるため、演奏時の動きが一定とは言えません。
ノリ・リズムの違う歌と同時進行でベースをグルーヴさせるは容易ではありません。
加えてベースの長いネック上で、横移動の大きいフレーズワークにより、歌っている際中のポジション確認が大きな負担となるでしょう。
歌いながらベースを弾くコツ
指板を見ずとも弾くためのポジショニング、運指
ベースボーカルをする上で歌に集中するするためには、ベースの演奏への注意を最小限にする必要があります。
その為視覚的なポジション確認をする機会を抑える為、運指が非常に重要になります。
動きのあるベースラインでも1フレット1フィンガーを基本として規則性のある運指にしましょう。
図①のようなランニングベースであっても運指に規則性を持たせることで、演奏に気をとられず歌に集中することが出来ます。
ベースの演奏は無意識に行なっていて、頭の中ではボーカルのリズムやメロディーを追いかけている状態にすることが大切です。
歌のリズムとベースラインのリズムを合わせる
歌がベースの演奏につられる、これはベースボーカルあるあるの一つでしょう。
それであれば、楽曲の雰囲気に支障のないように考えた上で、歌いながら弾きやすいようにベースラインを変えるというのも一つの手です。
図②のように4分のメロディーを追いかけるように8分 × 2のベースラインにして、メロディーとベースのリズムを合わせることで、歌いながら演奏しやすくなります。
ボーカルとベースのリズムを解析
ここまではベースの演奏にあまり意識を向けず、ボーカルを追いかけること目的にしていました。
しかし中にはベースとボーカルのリズムが全然違う場合や、休符が含まれているベースラインを弾きながら歌わないといけない場面も出てきます。
これはベースボーカルで最も苦労するところで、簡単には習得できないでしょう。
そのような場合まずはベースとボーカル両方のリズムを並べてそれぞれがどのような動きになっているか、分析してみましょう。
特に歌のリズムは、ベースをメインとしているプレーヤーにとって意識が薄いポイントであります。
譜面に書き出してみると分かりやすいです。
図③のようにベースラインに休符がある場合は、歌っている中でベースの休符を感じられるようにしましょう。
それぞれのリズムを解釈した上で、テンポを落とした状態で歌中にベースのリズムを感じられるよう、練習しましょう。
ボイストレーナーが考える歌を歌う上でのコツ
ここからはプロのボイストレーナー監修の元、歌を専門としていない人を対象に歌を歌う上でのコツを紹介します。
歌が上手いとは何を指すのか?
はじめに上手い歌の基準を統一したいと思います。
それは音程(ピッチ)がいいことです。
歌声がカッコいい、ビブラード等による表現力が豊か、声量があるなど他にもたくさん上げられそうですが、これらは個性という意味合いが強いです。
つまり好みによる部分が大きく、歌い手のスキルと必ずしも直結するものではありません。
一方、音程(ピッチ)がしっかりしていないと歌としては成立しません。
ベースでもチューニングがおかしい、あるいは本来のルートから半音違いのポジションを弾いてしまうとアンサンブルを崩してしまいますよね?
まずはこの音程(ピッチ)を歌の良し悪しとして、話を進めていきます。
良い音程(ピッチ)を判別するには?
次に歌い手、あるいは聞き手がピッチを判別するには何が必要なのか?
それにはハッキリとした声が必要です。
分かりやすく言うと、子音がしっかりと感じられる声です。
日本語の特性上、日本人の発声は母音が強い傾向にあり、子音がしっかり感じられないと歌がぼやけて聴こえます。
この歌声がぼやけた状態では、歌い手が歌っている最中に正確に音程(ピッチ)を取ることが出来ず、聞き手も曖昧にしか歌を感じることが出来ません。
ベースで言うなら必要以上にトーンが絞られた状態です。
この状態でいくらベース弦やピックアップを替えたとしてもハッキリした音は得られませんよね?
ハッキリした歌声にするには?
人間が呼吸をする際、酸素以外に埃やハウスダストなどの不純物も無意識に吸い込んでいます。
これらが鼻の周りに溜まってしまい、鼻から空気が通りにくくなります。
そして空気が通る道が狭いと声がこもってしまうのです。
ハッキリした歌声を出すにはデトックスによって不純物を除去する必要があります。
すぐに効果が出るデトックスの方法の一つに鼻うがいが挙げられます。
鼻から水を吸って口から出す、これを繰り返して不純物を体内から取り除きます。
最初は鼻に入っても痛くないよう塩水で行います。
体温に近いぬるま湯で行うとより効果的です。
最終的に水に変えて、ツーンとした痛みを感じなければ、大部分が除去できたことになります。
ベースでも歪みやガリがない方がクリアに音を出すことができますよね?
発声法を身につける以前に、声を出す体のメカニズムを理解し、声を出しやすい体へと手入れをすることがボイストレーニングの第一歩と言えます。
ベーシストなら一度は聴いておきたいベースボーカル
GEN / 04 Limited Sazabys
名古屋発の4ピースメロコアバンド。シンプルなベースラインながらも、中性的で甘いGEN氏の男性ボーカルにより、疾走感と迫力重視のメロコアに新たな風を吹かせています。
なおベーシストがメインボーカルを務めることにより、ギター2人の自由度の高い演奏にも注目です。
しばたありぼぼ / ヤバイTシャツ屋さん
メロコア界の異端児とも呼ばれる、大阪出身の3ピースメロコアバンドの女性ベーシスト。
独特な視点の歌詞と、キャッチャーな楽曲により、CMでも見かけるほど人気です。
男女混声のカラフルなボーカルワークと、動きのあるベースラインの中で歌っているところが注目ポイントです。
矢沢永吉
日本のロック界におけるカリスマ。
現在はボーカル専任ですが、ソロデビュー前に活動していたキャロルにてベースボーカルを担当していました。
キャロルはわずか2年半という短期間の活動ながらも強いインパクトを与え、日本のロックシーンに大きな影響を与えた伝説のバンドとされています。
関ジャムでもKenKen氏が歌とノリの違うベースを弾く姿を絶賛しており、名ボーカリストの裏にベーシストとしての面影を感じるアーティストです。
まとめ
以上となりますが、いかがでしょうか?
歌が上手な楽器プレーヤーは、歌に寄り添う演奏も出来るようになり、歌の伴奏としてのアンサンブルも同時に良くなります。
ちなみにボーカルを専門にしている人でも、コーラスやハモリが出来るのと出来ないのとでは大きく違ってきます。
多くのシンガーがメインボーカルのスキルアップを目的にコーラス・ハモリをトレーニングに取り入れています。
「楽器は弾けるけど、歌やコーラスには自信がない。音痴だし。」と思っている方、この記事を参考にベースボーカルやコーラスにぜひチャレンジしてみてください。
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