音楽制作の現場で良く耳にするプリプロ、これはプリプロダクションの略で、効率の良いレコーディングをするための事前準備、仮録音のことを指します。しかしその中身に関してはっきりと知っている人は多くないと思います。
仮録音なので、スマホやハンディレコーダーでもいいように思えるかもしれません。しかしバンド演奏を曲として聞くには、楽器ごとに収音し、バランスよくまとまった音源である必要があります。今回は概要に加え、MTRなどをスタジオに持ち込んで自分達でプリプロを行う際の注意点を踏まえて解説します。
○なぜプリプロを行うのか?
楽曲のアレンジの確認
コレが一番の理由です。楽曲のキー、テンポなど基本的な部分に加え、本番で演奏するフレーズやアレンジを確認します。
明らかにおかしい箇所が本番で発覚して、一からやり直しになることがないよう仮録りした音源を客観的に聴いてチェックします。
歌詞の確認
歌詞の内容はもちろん、歌詞の譜割や語感を確認します。特にJ-POPでは歌いやすいキャッチーなサビが重要、メロディに上手く言葉が乗るか確認します。
レコーディング本番で使う機材の選定
楽曲に相応しい楽器を探すのはレコーディングの醍醐味。本番ではなるべく演奏だけに集中出来るよう、プリプロでいろいろなベース、DI、アンプなどを試します。またラインの音や、マイクで収録したアンプの音は、普段スタジオで聴いているベースの音とは少し違うため、その音色を確認し、音作りの参考にします。
レコーディング本番の演奏シミュレーション
ヘッドホンでのモニター、クリックに合わせるなど普段のスタジオ練習とは演奏環境が違います。本番でいつも通りの演奏が出来るよう、事前に演奏環境を体感することで注意すべきポイントが見えてきます。
演奏パートの録音順、トラック数の確認
レコーディングではスタジオの環境や楽曲の内容によって、パート毎に個別録りすることが多いです。どのパートから録っていくのか段取りを組むことは計画的なレコーディングに不可欠です。またエフェクターやスラップなど複数音色を使い分ける場合は別録りします。指弾きとスラップではピークが違いますし、エフェクターの踏み換え時に音が上手く繋がらない恐れがあるため、音色ごとにトラックを用意するのがセオリーです。
レコーディング本番のタイムテーブル作成
録音順、トラック数が決まったらタイムテーブルを作成しましょう。パート毎に目安の時間を決めることで、レコーディング全体で必要な時間が見えてきます。このような準備をすることで、時間・予算が限られた中で良い演奏を録ることにつながります。
○プリプロの注意点
演奏はありのままを録る
シンコペーションの頭が早い、コードの響きがおかしいなど演奏内容の傾向をみたり、分析するのが目的なのでいつも通りの演奏を録りましょう。
プリプロは実験の場、思いつくもの全て試す
機材、フレーズ、歌のコーラスやギターのバッキングなど、思いつくものは全て録音し、感触を確かめましょう。様々な音色、フレーズの組み合わせを聴くことで、新しいアプローチや不要トラックの発見など楽曲に磨きがかかります。
ラフミックス、作り込み過ぎない
演奏内容、アレンジの確認が主な目的のため、EQ、コンプはなるべく元の音が分かる程度の処理にしておきましょう。ミックスの作業で余白を残すことで、レコーディング段階で楽器の音色やバッキングのトラック数など見直す余地ができます。
全体をまとめた構成表を作る
使う楽器やサウンドの方向性、パート別の構成などをまとめた表を作りましょう。
このようにしっかりと計画を立てる事でレコーディングがスムーズに進みます。
マスタリングでは音圧を上げ過ぎない
音圧を上げすぎると、音のない余白部分に音が入ることになります。音圧が高すぎることで、楽曲の印象が変わることがありますので、RMSメーターで-12を目安に素の状態が聴けるように仕上げましょう。
まとめ
バンドによっては予定調和を嫌い、演奏の即興性を生かすため、あえてプリプロを行わないこともあるようです。しかし即興性に答えるだけの、演奏技術や音楽理論、高度なディレクション能力が必要なので、レベルの高いレコーディングと言えます。プリプロは楽曲の内容チェックだけでなく、レコーディングの練習にもなり、バンドの演奏を磨くのにも役に立ちます。レコーディング前には是非行ってみて下さい。
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