[動画有] ベースの音作りにとって最も重要な”ライン出力”について

ベースの音と言えば、アンプから出る音をイメージしますが、ライブでもレコーディングでも、メインに使うのはDIでライン出力した音になることが圧倒的に多いです。しかしベースプレーヤーであってもラインの音作りや、ラインでの出力自体にあまり馴染みがないのではないでしょうか?
今回はベースはなぜラインの音が重要視されるのか、またライン出力の際に注意するポイントを解説していきます。そしてライン録りとアンプのマイク録り、その2つをブレンドした音を聞き比べした解説動画を用意しましたので、よろしければご覧ください。

Contents

1.なぜライン出力に馴染みがないのか?

なぜライン出力に馴染みがないのか、その最も大きい理由はDIを経由してベースをミキサーに繋ぎ、ライン出力した音を聴くことが習慣的ではないからです。基本的にはアンプからの出音がベースの音というベーシストの認識です。

厳密には異なりますが、現場で使われるラインの音に近くて身近なものはアンプヘッドやエフェクターなどについているヘッドホンアウトから聞いた音です。アンプのキャビネットから聴く音と比べると冷たくて無機質なため、敬遠される方も中にはいるでしょう。つまり本来のベースサウンドとは別物というイメージのため認識が薄いのではないでしょうか。

2.ライン出力時に使われるDIの役割

2-1.ハイインピーダンスからローインピーダンスへの変換

エレキベースはミキサーに直接繋いでラインで扱うとなると、音がかなり小さい状態です。ハイインピーダンスのままフェーダーを上げて、音を増幅するとノイズも一緒に底上げされたり、ハイ落ちしてしまい本来のベースサウンドを引き出すことが出来ません。そこでDIを間に経由することで、ローインピーダンスに変換され、ミキサーでロスなく扱えるように十分な入力を得ることができます。

これを「ロー出しハイ受け」と言います。逆にベース本体をミキサーに直接繋ぐとハイ出しロー受け状態となり、水道管の図で例を挙げると太い管から細い管に繋がれるので、水があふれてしまうといったイメージです。ちなみにMTRやオーディオインターフェースに付いているHi-zスイッチはギターやベースを直接繋いだ際にインピーダンスを合わせるためのものです。

2-2.アンバランスからバランスへ変換

ベースとアンプを繋ぐシールド、マイクを接続するXLRケーブルは音声信号を流していますが、伝送方法が異なります。シールドは信号線が1本(アンバランス)なのに対して、XLRケーブルは信号線がホットとコールドの2本(バランス)です。バランス転送はホットと逆相の信号をコールドに流すことでノイズが乗っても打ち消すことができます。つまりノイズに強いことが最大のメリットです。

ライブハウスではミキサーが置いてあるPA席とステージが離れています。アンバランス転送の場合シールドが長いほどノイズの影響を受けやすいので、DIを経由してバランス転送に切り替えることにより、ケーブルが長くなってもノイズの影響を受けることなく、ラインの音をミキサーで受信できます。


3.ライブでラインの音を使う理由は?

ライブステージで観客向けへの出音は多くの場合ラインの音をメインに使います。その理由はアンプのマイク録りでは持っていない音の特性があるからです。ベースは低音担当ですが、カバーする帯域は広く、アタック成分は意外かもしれませんがギターより高い5-10khz辺りにあります。マイクでは拾いきれないワイドレンジなベースのサウンドをそのまま出力することができるのがラインのメリットです。マイク録りの音よりも発音がハッキリしているのも大きな特徴です。

低音の指向性を持たないという特性上、その反響や”低音周り”が起こってしまい、特にホールなどの広い会場ではベースの音がぼやけてしまいがちです。しかも低音はベースだけでなくバスドラムやタム、エレキギター、ピアノ、ボーカルなどあやゆるパートに含まれており、アンサンブルにおける低音処理にPAは神経を使います。ベースアンプから出た音は温かみや勢いがあっていいのですが、マイクで集音するとぼやけいて、ナローレンジな印象です。ダイナミックマイクは得意な帯域が決まっており、ベースのワイドレンジなサウンドを全て捉えきれません。ちなみに全帯域がフラットに集音出来るコンデンサーマイクはベースアンプのような音圧のある音に対しては、迫力が捉えきれません。またマイクの感度が高いことからベース以外の音がカブりまくってしまい、ベースの独立性確保という面からも通常ライブで使われることはまずありません。

以上の背景からベースアンプはベーシストのモニター、ステージ上のアンサンブル環境確保という役割として使われ、実際にPA側では音像がハッキリしたラインの音によってアンサンブルにおけるリズム隊の核を作り、コードの土台を固めるという考えで音を作ります。

4.レコーディングでライン録りをする理由は?

レコーディングでラインの信号を多く使う理由はベース本体のキャラクターをダイレクトに引き出すことができるからです。ベース本体→シールド→DI→ミキサー→レコーダーというシンプルな接続であれば、ベースのキャラクターをダイレクトに録音できます。

歯切れ良いサウンドならジャズベース、いなたく太いサウンドならプレシジョンベースと言った具合に、レコーディングでは楽曲に相応しい楽器選びが重要です。アンプをマイキングした音だと、そのアンプとマイクのキャラクターも込みのサウンドとなり、ベース本体の音をハッキリと聴かせるのには向いていません。現代の録音ではまずは素材を高い質で録音する作業が行われます。それにはラインで録るのが最適で、例えばアンプライクなサウンドが欲しければ、ラインで録った音をアンプに流してそれをマイキングする、リアンプという手法が使われます。

アンサンブル全体で考えたとき、ドラムやギター、ボーカルのマイク録りでいわゆる”空気感”は十分に演出されます。空気感のないベースのラインの音は単体では物足らなくても、アンサンブルと混ぜれば他のパートと前後感のバランスが取れます。

もしもレコーディングでマイク録りする際は、必ずと言っていいほどDI経由でライン録りも同時に行っています。ミックスダウンの際にも、ラインを軸にマイクの音を肉付けするようなイメージで2つをブレンドさせて音作りすることもありますね。


5.ラインの音作りで重要なポイント

5-1.シールド

多くの要素が介在しないライン出力において、シールドは非常に重要な要素になります。自分の出したいサウンドをよく考え、後から作業がしやすいように出来るだけロスのない高品位なシールドが望ましいですね。レコーディングスタジオにはそのような用途に適したシールドケーブルが置いてあると思います。またレコーディングの際はノイズやロスを発生させないため、可能な限り短いものが好ましいです。

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5-2.ダイレクトボックス(DI)

ライブハウスやレコーディングスタジオで常設されている機材ですが、シールド同様にDIもそれぞれ異なるサウンドキャラクターを持ち最終的なサウンドに大きく影響します。ベースやシールド、アンプと同様に自分のスタイルに適したものを1台持っておくと、より安心してライン信号を送ることができますよね。なおSUMMIT AUDIO TD100など真空管を搭載し、ラインであってもアンプから鳴らしたようなウォームなサウンドが得られる機種もあります。その他SANSAMP BASS DRIVER DIを筆頭にベース用エフェクターとして積極的に音作りするプリアンプ/DIタイプもあります。

下記にオススメのDI、プリアンプ/DIを紹介していますので、よろしければご覧ください。

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6.ライン録り、マイク録り、ブレンドした音を比較

ライン録りした音とアンプをマイキングした音、その二つをブレンドした音を比較してみましょう。

以下音声メディアです。Youtubeを見た人は飛ばして、Youtubeめんどくさい人は聴いてみてください!

スラップ(マイク録音)

スラップ(ライン録音)

フィンガー(ライン30%, マイク70%)

フィンガー(ライン70%, マイク30%)

低域の特性は大きく変わりませんが、2khz以降の高域はラインの方がよく出てますね。マイク録りのトラックはスラップのプルがキックに押されて奥に追いやられてしまっている印象です。

楽曲やバンドスタイルによって、ベースの聴かせ方は様々ですが、ラインの方が音の芯がしっかりしていて安定感のあるように聞こえます。特に音の立ち上がりやピッキングのニュアンスを強く聴かせる場合には、ラインを中心として音作りした方がいいですね。

まとめ

以上となりますが、いかがでしょうか?

これまではアンプで鳴らした音でベースの音の良し悪しを判断していましたが、昨今はDTM、宅録機材の普及により、ラインでも満足な音が出せるようベースを制作している楽器メーカーの意識も変わってきています。またレコーディングスタジオではなく、自宅でベースをライン録りしてレコーディング用のベーストラックとしてオンラインで取り扱うなど、音楽制作の現場環境も変化していることから、今後はベースプレーヤー自身もラインの音の取り扱う機会が増えていくでしょう。




 

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